キラリと光る、提供価値を示すブランド名
「ゴリラガラス」をご存知だろうか。スマートフォンなどのパネルに使用されている強化ガラスのブランドで、近年急速に一般の生活者が目にすることが増えてきている。近年では、アップルのiPhoneやソニーモバイルコミュニケーションズのXperia、サムスンのGalaxyなど、有力ブランドで採用されている。採用実績だけではなく、スマートフォンの性能を紹介する記事などでも頻出している。ゴリラガラスの場合、性能を数値で解説するよりもブランド名の「ゴリラガラス」採用と記されることが多く、性能を示すブランドとしてすっかり定着していることを示している。
ゴリラガラスは、アメリカのコーニング社というアメリカのニューヨーク州に本社をおく世界最大級のガラス製品メーカーが製造している。有力なメーカーではあるが、日本においては社名の知名度という点でまだ高いとは言えないのではないだろうか。そんな中、製品ブランドである「ゴリラガラス」が先行して認知を拡大している。成分ブランディングとも言われている、BtoBプロダクトのブランディングの成功例である。
BtoBのプロダクトブランディングは、生活者が直接購買するBtoCプロダクトのブランディングに比べて発展の歴史は新しいものの、近年では積極的に進めている企業も多い。メリットとしてまず「生活者との接点」が挙げられる。生活者との接点を持ちづらいBtoB企業にとって、採用活動などで認知度の低さから人材確保に苦労するケースは多い。2番目として「顧客最終製品への付加価値」がある。様々なカテゴリーで競争の激しさから差別化が難しくなっている現代において、ブランディングされ提供価値で差別化できるパーツは、生活者の購買に対する意思決定に大きく作用する。また、その効果があるからこそ、BtoB企業から顧客企業へ効果的なアピールとなり、ビジネスを助けることにつながる。
BtoBのプロダクトブランディングで、成功例として最も名前が挙がるのはインテルだ。「インテル入ってる(Intel Inside)」のコピーでもおなじみの、主にパソコン用のCPUブランド「PENTIUM」シリーズや「CORE」シリーズだ。いまではパソコンの購入を検討する際に、スペックの比較の際にこの製品ブランド名も検討項目の一つに上がるだろう。インテルの場合は、同社CPUを採用したパソコンへのブランドシール貼付やテレビCMなど広告での積極的な露出で、認知の拡大を図っている。ゴリラガラス、インテルなど、パソコンやスマートフォンなど最新技術が集積されているハイテクカテゴリーでは、BtoBのプロダクトブランディングの採用事例は多い。
また、衣料などの素材分野でも事例は目立つ。「クラリーノ」はクラレの高性能合成皮革だ。ランドセルでの採用で有名だが、ランドセル選びの際に素材選択で牛革などに混じりブランド名で「クラリーノ」と記されていることは多い。また、アメリカのWLゴア&アソシエイツ社が製造する「GORE-TEX」も、有力な素材のブランドだ。外部からの防水と服などの内部除湿を両立させた防水透湿性素材で、「マムート(MAMMUT)」などの有名なアウトドアブランドや、スポーツブランドのナイキなどに採用されている。特徴として、採用されている製品には「GORE-TEX」と表記されたひし形のタグが付されている。
様々なカテゴリーで広がっているBtoBのプロダクトブランディングだが、他のブランディング施策と比較し重視すべきポイントとしてネーミングが挙げられる。最終製品ではないためパッケージなどは存在せず、またインテルなどの例外は除き基本的に広告などでの露出は非常に少ないのがBtoBのプロダクトブランディングである。さらに最終製品のブランドの世界観の中で表示されるため、ロゴなどのブランドアイデンティティが使用できないケースも想定される。そこでネーミングには、1)差別性・2)訴求性・3)創造性・4)受容性・5)使用可能性(ブラビス『5 arrow approachTM』より)などの観点から、効果的に開発される必要があり、その前提としてターゲットや提供価値を明確化したブランドコンセプトが重要となってくるといえる。
August 9, 2016 by Tokyo