ルバン?レヴァイン?ルヴァン!
「Levain」。初めてこのブランドを目にした時、割と衝撃的な思いだったのが記憶に新しい。私自身は、かの有名なJリーグの大会名称が「ヤマザキナビスコカップ」から「YBCルヴァンカップ」に変更するとのニュースで知ったのだが、この変更後の名称の斬新な響きと、英字を何と読めばいいのかのわからなさにかなり衝撃を覚えた。ことの発端は、当時のヤマザキナビスコ社がモンデリーズ・インターナショナル社と結んでいた「ナビスコ」ブランドのライセンス契約終了に伴い、社名をヤマザキビスケット社に変更することを受け、Jリーグの一つの大会である「ヤマザキナビスコカップ」の名称を「YBCルヴァンカップ」に変更せざるを得なかったとのことである。また合わせて、ヤマザキナビスコ社がライセンス契約のもと販売していたクラッカー「リッツ」に代わるブランドとして生まれたのが「Levain」である。あぁ、せっかく日本での販売に尽力してきたのに、ライセンス契約が終了するからといって主力ブランドとも言える商品を販売できなくなるなんて、ビジネスの世界は難しいな、と感じた。
思えば、2016年はそういったライセンス切れによるブランドの切り替えが多かった年のように感じる。例えば明治社が販売していた「イソジン」は、権利元のムンディファーマ社が自前の国内展開に切り替える方針に伴い、関係の深い塩野義製薬社を新たな販売提携先に選んだ。三陽商会社がライセンス契約を結び日本で展開していた「バーバリー」ブランドも、契約切れに伴い、バーバリー日本法人を通じた直営展開のみになるとのことだ。
こうしたいわゆるライセンスブランドにまつわるニュースは、そのブランドがライセンスものかどうかに限らず、企業として「ブランド価値をどこに集約するのか?それは何故か?(どういった目的からか?)」を明確にすることの重要性を示唆してくれているのではないか。例えば食品メーカーAのXという商品についても、その商品によって生まれる価値をコーポレートブランドAの価値向上につなげたいのか、はたまたプロダクトブランドXに価値を集約したいのかによって、広告の作り方、PKGデザインでの訴求優先順位、HPでの見せ方、自社の商品ブランド体系...など諸々のブランド活動が変わってくるだろう。先述の「イソジン」に関して言えば、ブランドの価値を「イソジン」ブランドに集約していく方針があったのではないかと推察するが(広告など「イソジン」というブランド名が強調されていた記憶があるので)、「イソジン」ブランドが使えなくなった今、「明治うがい薬」という商品の「明治」という部分に、「イソジン」ブランド時代の資産がどれほど継承されているかは、調査などを通じて確かめたいところである。
もちろん食品など目に見える商品を扱う企業だけでなく、目に見えない商品を扱う企業にとっても、「どこにブランド価値を集約するか」は大事な視点だと思う。これはとある生命保険業に携わる方から伺った話だが、生命保険会社としてのブランドキャラクターを、タレントにするか、キャラクターにするか、というのは議論になるところらしい。ただ、多くの企業ではキャラクターの方を採用している。というのも、タレントにはスキャンダルなどのリスクが伴うし、ドラマなどの配役でその人のイメージが左右することがあるから、とのことだ。またキャラクターを採用するにしても、既に認知度の高いキャラクターとライセンス契約を結んで活用するのか、それとも認知度こそ成長させていく必要はあるが、ライセンス切れの可能性がない自社オリジナルのキャラクターを採用するのか、こちらも議論が分かれるポイントで、各社それぞれの方針があるように見受けられる。「ブランド価値をどこに集約するか」というテーマに対しては、さまざまなリスクを想定した上で検討する必要がありそうだ。
ライセンスブランドにまつわる一連のニュースは、契約切れに伴うブランド資産損失のリスクを示唆してくれているし、ひいては企業やブランドのフロー部分(時代時代によって変わり得るもの)に、ブランド価値を集約することの危うさを気づかせてくれたのではないか。もう一度ご自身の担当ブランドについて、「ブランド価値をどこに集約するか?」と再考するきっかけになれば幸いである。
【参考】
Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/Jリーグカップ#.E5.A4.A7.E4.BC.9A.E5.90.8D.E7.A7.B0
November 22, 2016 by Tokyo