エクスチェンジレポート

日本、韓国、中国における消費者トレンド、マーケットトレンド、企業や商品の最新ビジネストピックスなど、海外の方の興味を寒気できそうなブランディングやパッケージデザインに関わるニュースを定期的に発信します。

authors our grobal offices

  • 東京本社
    東京本社
    TEL : +81.3.6455.1240
  • ソウル支社
    ソウル支社
    TEL : +82.2.553.9305
  • 上海支社
    上海支社
    TEL : +86.21.6427.6781
グローバルブランドのビジュアル、 統一重視? 個別商品やローカル重視?

グローバルブランドのビジュアル、 統一重視? 個別商品やローカル重視?

東京本社

グローバルブランドのビジュアル統一の現状

商品やサービスのグローバル展開に伴い、企業の悩ますものの一つとして、ブランドが 持つ世界観やデザインをどこまでグローバルで統一化するかという点である。

ロゴマークを統一展開する企業は多いが、ロゴ以外のデザイン要素やブランドが醸成す る世界観やパーソナリティについて統一感を持って展開しているブランドは実は多く ない。

一方で、グローバルで成功するブランドの多くは、商品のビジュアルはもとより、プロ モーション、店舗、人の所作にまで独特の統一した世界観をもたらしている。

例えば、Apple 社。独特の機能やUI を導入し常に独自の商品でイノベーターからマジ ョリティ層まで幅広いターゲットの心を掴むブランドであるが、そこにはどこを切って もぶれないブランドの世界観が存在し、商品のあり方のみならず視覚的にも他ブランド と明確な差別化を図っている。

一方で消費財の世界でいうと、コカコーラやパンパースなどもグローバルで世界観を共 有することに成功している。世界のどのショップ、スーパー、広告、パッケージを見て もブランドの佇まいは一緒である。

では、なぜ、ビジュアルや世界観をグローバルで統一的に展開しないブランドが多数存 在するのか。実際に、日本の企業の多くは、ほとんどが、 前述のコカコーラほどのグ ローバルでの統一デザイン、世界観共有を行っていない。

なぜか?

統一感は、時に売りの足かせになるからである。
統一感は、時に消費者から拒否反応を起こさせるからである。
市場がグローバルならなおさらである。日本のデザインを海外支社へ押し付けようとす ると、必ず「うちの国では、このデザインじゃ売れない」「我が国では、この訴求の仕 方では響かない」ということになる。各国の文化、宗教、マーケットなど様々なバック グラウンドが邪魔をするからだ。

さらに言うと、同じブランド傘下に多種多様な商品を扱うブランドであれば、尚更統一 感醸成が難しくなる。例えば、大手流通から出す商品などは、同じブランドでも食品も あれば、薬などもあり同じブランドの世界観で十把一絡げにすればどうしても消費者に 響かなくなる商品が出て来るのである。

ビジュアル統一のメリット

では、どうしたら、グローバルでブランドを効率的に訴求し、ブランドの統一感を売り に繋げることができるのだろうか?

まず前提として、ブランドの世界観を統一することの意義を整理したい。

ブランドの世界観統一の最も代表的なメリットは、ブランドの視認性や記憶性向上から くる、ブランド体験とブランドイメージ資産の相乗効果である。 つまり、ブランドのビジュアルを横断的に統一することで、例えばその商品を見ればそ このブランドだとすぐに分かり、ブランドが備えるイメージや価値をそれぞれの商品に 付与しやすくなる。また、逆に、その商品によって受けるポジティブな印象や経験をブ ランドに付与することもできやすくする。 ブランドビジュアルの統一感醸成は、ブランドと商品の双方向のイメージの交換を容易 にし、視覚イメージを媒介に、ブランド価値と商品イメージをリンクさせポジティブな 資産を蓄積していくという効果がある。

そして、この効果は単体の商品に留まらず、ブランドファミリー全体に影響する。 消費者からすると、美味しかったあの商品と同じファミリーに見えるこの商品も美味し いであろうというように、ブランドがもつ価値を容易に汲み取ることができるのである。

代表的な価値のまとめ)
ブランド視認性向上、ブランド記憶性向上により
・ブランド価値を商品に繋げる
・商品の価値をブランドに繋げる
・ブランド価値をブランドファミリーへ容易に展開する

具体例を挙げると、パンパースであれば、ブランドが持つ眠りをサポートするための技 術、安心感、信頼感などの既得のイメージとブランドを強く相互リンクさせるために、 グローバルでロゴ、周りの緑のグラフィックをすべての商品群、すべてのタッチポイン トで一貫して展開することにより消費者の頭に強くその印象を残すことに成功してい る。さらに、パンパースブランドで展開する他のファミリーブランド(例:おしりふき) への購買への誘引をもたらすことができる。

ビジュアル統一のデメリット

ここで考えて行かなければならないもう一つのポイントが、統一感強化によるデメリッ トもある。パンパースでいうと、個々のオムツ製品が持つ技術や特殊な使用方法、便利 な機能などの売りやUSP が訴求しにくくなるデメリットがある。例えば、尿漏れ技術が 特に他より優れていて、ある国では売りに繋がる最大の価値だとしても、例外扱いでブ ランド訴求を弱くしてそこを最優先で訴求していくということはできない。

ビジュアル統一のバランスの取り方

このように、グローバルのブランド統一感訴求における問題をダイナミックに捉えると、 個別商品の売り要素を優先的に考えるべきか、全体のブランドの統一性を優先にしてい くかべきか、または、その中間かという統一と売り訴求のバランスが課題となってくる。

その課題への我々のアプローチの仕方を紹介したい。
図1をご覧頂きたい。

* 図1: Brand Visual Optimization Model

まず、ブランドの統一性と、ブランド関与度(=商品を店頭で見て決めるのではなく、 ブランドをあらかじめ決めて買う度合い)には、概して、そこに相関関係の傾向がある といえる。 ブランド関与度が低い商品カテゴリーは、店頭でいかにその商品そのものが魅力的であ るか美辞麗句を使って訴求し、惹きつけることが必要である一方、関与度が高い商品は、 商品そのものが持つ魅力よりもブランドをいかに目立たせるかが購買のトリガーにな る。 図は、縦軸にブランド統一性、横軸にブランド関与度としていて、そこ一般的な商品群 を、それらが持つ世界共通の普遍的な機能価値(ユニバーサルな価値)を参考にプロッ トしたものである。 一般に高級品や嗜好度の高い商品はブランド関与度が高く、コモディティといわれる商 品はブランド関与度が低いため、ブランドの統一性と嗜好性も概していうと相関関係と 言える。

図1のように、統一性のレベルをスタディする手法の1つに、代表的な他のカテゴリー をベンチマークにしながら、参考としたい商品カテゴリーをプロットしていけば相対的 見地から大まかな統一性のあり方が見えてくる。

ただし、これはあくまでカテゴリーが持つ普遍的価値での比較であり、同じカテゴリー の中にも様々な商品、ブランドがあるため、さらにカテゴリー内での統一のレベル感を 打ち出す必要がる。その考え方を示したものが図2 である。

例えば、時計でいえば、「時間を知る」というユニバーサルな基礎価値に加えて、手の 込んだ伝統的な作り込みをした機械式時計であれば嗜好性が高くなり、ブランドは基礎 価値よりもプラスアルファな差別的価値を一貫して訴求し、ブランドの差別化をする必 要が出てくる。ゆえに、ビジュアル上で、強く、統一して、基礎価値以外のブランドの 世界観や価値を伝え、ブランドから生まれるプレミアムを享受しなければならないので ある。

一方で、「正確に時間」を知るという基礎的価値のみに重点を置く場合、嗜好性は低く、 ブランドプレミアムは望めないため、統一的なブランドの世界観作りに多くの場所や時 間を割くよりも個々の製品機能を強く訴求することが売りに必要になってくる。

まとめ

まとめると、グローバルブランドの統一性を検討するのに必要な要素は、

1 カテゴリー別、普遍的価値を基にした相対的ポジショニング
2 カテゴリー内のそのブランドが独自に持つ価値によるポジショニング

以上の2 点の状況を鑑み、統一性レベルや訴求すべきブランドパーソナリティを検討す る必要があり、それを図2 のようにポジショニングをしていくと相対的な統一性のあり 方が見えてくる。

ロレックスの場合、時計というカテゴリーに所属することにより、ブランドの統一感レ ベルが大まかにポジショニングされるが、さらにカテゴリー内における差別要素として、 機械式の精度などの技術的価値、他にない伝統、時計の意匠としてのデザイン等々の価 値が加わり、ブランドとしてのパーソナリティが形成されブランド関与度が向上し、そ の結果、ブランドの世界観の統一性はカテゴリー内でも上位レベル(統一度高レベル) にポジショニングすることができる。

つまり、ロレックスの場合でいえば、ブランド統一訴求は、個々の商品の売り情報より 優先されるべきということになる。 実際、様々なブランドのタッチポイントにおいてロレックスは個々の商品ではなくブラ ンドの世界観を統一して訴求し、世界中の多くの消費者から支持を得て今に至っている。

厄介と思われるのは、カテゴリーを横断するブランドの場合である。 ただし、その場合も保有する製品群をユニバーサルな価値を軸にいくつかに分類し、そ れぞれの分類においてデザイン展開、世界観展開のルールを個々に決めていくことで、 ブランドの世界観作りの方向性は体系的に整理することが出来る。 この場合忘れていけないのが、消費者の視点である。決して、メーカー側の都合で分類 するのではなく、消費者視点でのユニバーサルな価値を軸に分類を行うべきである。

以上、グローバルでブランドを統一展開する際に必ず考慮すべき点や対処方法の概略を 述べた。さらにそのディテールや応用、具体的な進め方については弊社コンサルタント に是非コンタクトして頂きたい。

東京本社

June 9, 2016 by Tokyo