ブランドコンサルタントに必要な3つのこと
多くの商品がコモディティ化し、市場が飽和する中で、ブランディングという手法が注目を集めて久しい。そのブランディングを、専門的な見地からバックアップするのがブランドコンサルタントであるが、その仕事に必要な能力というのは一般的にあまり知られていない。「市場分析力?」「ロゴやパッケージに関するデザインの知見?」「商品のコンセプト開発能力?」持たれるイメージは様々であり、かつ抽象的だ。一体、ブランドコンサルタントに必要な能力とは何なのだろうか。
ブランドコンサルタントの3つの領域とは?
そもそも、ブランドコンサルタントの仕事というのは、大別すると3つの領域に分けることができる。消費者調査や競合調査などのリサーチ結果を分析し、そこから売るための戦略を立案するマーケティング領域。業務プロセスや人事評価制度の改善など、経営の中核部分を担う経営コンサルティング領域。そして、商品のコンセプトメイクやコピーライティングといったクリエイティブ領域である。詳細を記述すれば、これ以外にも多種多様な業務内容をカバーできるのがブランドコンサルタントとしての理想的な姿なのであるが、必要不可欠な能力というものが3つだけある。逆に言えば、この3つの能力を伸ばし、備えてさえすれば、優れたブランドコンサルタントであると言えるだろう。
必要不可欠な3つの能力。そのうちの1つ目が、「アイデアで語る力」だ。例えば、飲料メーカーからパッケージデザインの開発依頼を受けたとする。そのメーカーにとっては新ブランドであるが、似たようなコンセプトの商品が既に市場にはあるため、後発としてのスタート。オリエンを受けたブランドコンサルタントは、競合を分析し、ポジショニングを設定。「ターゲットは、◯歳〜◯歳の主婦層。競合の◯◯という商品に関しては、△△という理由で購入を控えているため、今回の新ブランドの購買層になり得る可能性がある」というような、いわば"事実"を語るケースが多い。
その一方で、デザイナーは当然ながら"ビジュアル表現"を追求する。あるデザイナーは、競合商品に埋もれない先進的なデザインを、あるデザイナーはそのメーカーらしさを大切にするデザインを目指すかもしれない。"事実"を語るコンサルタントと、"ビジュアル"を語るデザイナー。そこには、共通となる言語、共有できるイメージがないため、多くの場合、両者の議論は上滑りしてしまう。調査結果から得られたデータ、数字をいくらデザイナーに語ったとしても、それはデザインに落ちていかない。表面的なビジュアル表現についていくら語られても、コンサタントはそのイメージを頭に描くことができない。そこで重要になってくるのがアイデアなのである。
コンサルタントは、調査結果や商品スペックといった事実から、アイデアを導き出さなければいけない。事実のその先にある消費者にとっての"気づき"や"価値"、"感動"を見出すことが重要になってくるのだ。有名な例を挙げればスターバックスだ。スターバックスは、おいしいコーヒーを提供するのではなく、「第三の場所」を提供することを理念として掲げている。自宅やオフィス以外で心からくつろげる場所=「第三の場所」を提供することで、これまでのコーヒーチェーンとは違う独自のポジションを築き、ファンを増やし続けてきた。ユニクロは、ファッション性のある高機能な服を適正価格で届けられることを謳うのではなく、「服で、人それぞれのライフスタイルをつくる」という機能性の先にある、人々にとっての価値をアピールしている。アクエリアスは、単なる水分補給飲料ではなく、「命を守る飲み物」というブランドアイデンティティを大切にしている。
いずれのブランドも、「この商品が発売されることで、人々の生活がこう変わる、人々の生活をこう変える」「この商品は、消費者にとってこんな存在になるべきだ」といった考えからブランドを構築し、多くのファンを獲得する企業、商品へと成長を遂げてきた。事実のその先にある"気づき""価値""感動"。これこそがアイデアなのである。客観的なデータや無味乾燥な数字ではなく、こういったアイデアがあれば、コンサルタントもデザイナーも目指すべき世界観を共有でき、ベクトルもひとつになる。「そのブランドの世界観を実現するなら、こんなデザインのト--ン&マナーが合うんじゃないか」「その世界観は、◯◯◯みたいなブランドに近いのかもしれない」そういった意識をデザイナーも持つことができるのだ。
アイデアこそが、ブランドコンサルタントとデザイナーの共通言語となり、その共通言語があるからこそ、より建設的なディスカッションが可能になる。そして最終的に、優れたアウトプットを生み出すことができるのだ。
October 9, 2015 by Tokyo