エクスチェンジレポート

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甘いハニーに魅了された韓国

甘いハニーに魅了された韓国

東京本社

韓国で最も大きな求人情報サイトの一つである「ジョブコリア」が会社員727人を対象に行った「2014分野別ベスト商品」 調査で、1位の自撮り棒に次いでハニー味のスナック菓子が2位を占めた。

韓国の大手菓子メーカー「ヘテ製菓」から2014年8月に発売されたポテトチップス「ハニーバターチップ(허니버터칩)」は、製菓業界に数十年間携わってきた人も始めて経験する現象というほどの一大旋風を巻き起こした。

韓国の製菓業界では新商品が年間100億ウォン(約10億6千万円)売上を達成したら「ヒット商品」として分類される。ところが「ハニーバターチップ」は発売3ヶ月弱で50億ウォン(約5億3千万円)、1年で748億ウォン(約79億8千万円)という凄まじい売上を達成した。その後も70億ウォン(約7億4千万円)の月次売上を維持しているという。どれだけの成功商品か想像できる。

買いたくても買えないお菓子、並んで買うお菓子、陳列前に売り切れるお菓子、人質作戦を繰り広げるお菓子(抱き合わせ販売)という様々な修飾語を作った、空前絶後の「ハニーバターチップ」旋風を探る。

まず、韓国でハニーバターチップの登場は非常に新しく新鮮であった。韓国のポテトチップス市場は塩辛い味をベースに他のフレーバーを加味する商品がほとんどだった。一見合わなさそうなハニーの甘味をベースにすることで従来のポテトチップスの固定観念を越えた。ハニーバターチップは韓国産アカシア蜂蜜と、一般バターより味と香りに優れているというフランス産グルメバターを使用した。甘さと香ばしさがありながらも塩辛さは少なめにすることで、今までのどの商品とも差別化された味を実現できた。

二番目の成功要因は新しいマーケティング・コミュニケーションといえる。テレビ・ラジオ・新聞などのマスメディアで広告を掲載せず、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の口コミだけで人気が拡散した。発売3ヶ月目の11月の頭、ハニーバターチップに関するInstagram(写真共有SNS)のハッシュタグは1万1000件であったが、一ヵ月後の12月には10倍を越える12万件に至りネズミ算式に増え続けた。ソウル大学校とKTの共同研究チームがビックデータ分析を通じてハニーバターチップの伝播過程を立体関係構造で描いた結果、ハニーバターチップブームを主導したのは「1週~3週目にポジティブな反応を積極的に見せた一般SNSユーザー」と述べた。

ヘテ製菓のポテトチップスは江原道(カンウォンド) 文幕(ムンマク)工場のみで生産される。24時間勤務体制でフル稼働しても供給が需要に追いつかないため全量売り切れてしまい、芸能人のSNSやネットを飾るハニーバターチップの画像は共鳴効果を生んだ。ハニーバターチップのマーケティングはSNSの口コミと品切れが主役という人もいる。

三番目の要因は上昇効果といえる。ハニーバターチップが人気と共に品薄になるにつれ、競合会社は類似商品を作り消費者を惑わした。元々ポテトスナックに強いノンシムやオリオンも蜂蜜とバターを使った商品を発売し、好調な売上を見せた。一方、オリジナルのハニーバターチップを買えなかった消費者は類似商品を消費することである程度満足したが、オリジナルには及ばないという意見と共にオリジナルに対する熱望の声は大きくなるばかりだった。スナック菓子はもちろんのこと、ファミリーレストラン、酒類業界、化粧品業界などスナック菓子と関わりのない業界でもハニー商品が続々と発売された。これで2014年末から2015年上半期までハニーバター天国といっても過言ではないほどハニーに関する商品とサービスがブームとなり、韓国に吹き荒れた。これはハニーバターチップの売上にポジティブな上昇効果を呼んできた。

ヘテ製菓はハニーバターチップの品薄現象が長引くにつれ苦心の末、2015年7月工場の増設を決めた。増設には莫大な費用がかかり、需要が少なくなれば問題が起きるため苦心するしかない。一時「白スープインスタントラーメン」で流行りだした「コッコ麺(꼬꼬면)」の場合、工場を増設した次の年、マーケットシェアが17%から2%に激減し困難になったという。新しい工場が完工するとハニーバターチップの生産量は現在の月75億ウォンから最大150億ウォンに増える。ハニー商品が一時の流行に止まるか、2016年以降も消費者に親しまれロングセラーになるかは誰にも予想できないだろう。

東京本社

October 28, 2015 by Tokyo